多汗症は、全身の発汗が増加する全身性多汗症と、体の一部に限局して発汗量が増加する局所多汗症に分類されます。
特に原因のない原発性全身性多汗症と、他の疾患に合併して起きる続発性全身性多汗症があります。
続発性全身性多汗症は、内科的な疾患(甲状腺の機能異常など)、結核などの感染症、神経疾患や薬剤と関係する場合が多く、甲状腺ホルモンなどの採血検査をする必要があります。
基礎疾患の無い原発性局所多汗症と、外傷や腫瘍などの神経障害による続発性局所多汗症があります。
原発性局所多汗症は、幼少時~思春期頃に発症し、精神的な反応(緊張など)が要因として挙げられる場合が多く、手の平、足の裏、額、脇(わき)の下など体の限局した部位から過剰な発汗を認める疾患です。
日常生活では、書類に汗じみができたり、発汗が恥ずかしくて手を握れないなどの支障を来します。
手の平の局所多汗症の患者さんの有病率は人口の約5.3%と高い割合ですが、医療機関へかかる割合は1割以下であることから、治療されていない患者さんが多いことがわかります。
多汗症は、様々な治療法があり、適切な治療を行うことによって症状の改善が期待されます。多汗症の治療の前後で不安症や対人恐怖症などが有意に改善した報告も数多くありますので、「体質だから仕方ない」とあきらめるのではなく、お気軽にご相談ください。
・精神的要因(緊張・ストレス・不安)
人前に出て緊張した時、失敗してはいけないというプレッシャーや不安を感じた時などに交感神経が優位になって発汗を促します。
・遺伝的要因
局所多汗症の患者さんの一部に家族内発症がみられることから、遺伝的要因もあると考えられています。
※これらの2項目以上を満たす場合に、局所多汗症と診断します。
イオントフォレーシス(保険診療)・・・手・足の多汗症に(当院で処置可能)
手足の多汗症には有効な治療法で、皮膚科学会のガイドラインでは第一選択の治療法です。
手の平、足の裏を水道水の入った容器の中に浸し、10~20mAの直流電流を10分ほど流す治療法です。通電することにより生じる水素イオンが汗の出口を障害して発汗を抑えるといわれております。
最初は週1〜2回の頻度で開始し、約5〜8回で症状の改善がみられます。
夏は週1回、冬は2週に1回のペースで治療を継続します。
治療を中断すると再発しますので、定期的な治療が必要です。
汗腺にフタをして発汗を抑えます。根本的な治療法ではありませんが、手軽に自宅で行えることから局所多汗症の第一選択薬とされています。効果を持続させるために継続的な治療が必要になります。保険適応外のため、塩化アルミニウム液を自費でご提供しております。
主な副作用:かぶれ
本剤は、日本初の原発性腋窩多汗症用の外用剤です。多汗症の原因となるエクリン汗腺のムスカリン受容体と結合することで発汗を抑制します。1日1回の両腋窩への塗布で効果が期待でき、塗布の際にアプリケーター(塗布具)を用いることで手が薬液に触れることなく塗布が可能です。
主な副作用:かぶれ、口渇など
A型ボツリヌス毒素を注射することで、発汗に関わるアセチルコリンを抑制して、汗の量を減らす治療法です。
重症なワキの多汗症で、塩化アルミニウム液などの治療により症状が改善されない場合、保険適応となります。
多汗症の重症度分類:自覚症状により以下の4段階に分類した Hyperhidrosis disease severity scale(HDSS)を用いております。
このうち(3)、(4)を重症の指標にしています。
ボトックス注射
保険適用 グラクソスミスクライン社の製剤 | 約22,000円(3割負担) |
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保険適用外 アラガン社の製剤 | 60,000円+税(自由診療) |
その他に、診察料がかかります。
効果が4~9ヶ月続きますので、夏のわき汗にお悩みの方は、夏前に施術していただくと、ひと夏を快適に過ごせることが期待できます。
内服薬のみで局所多汗症をコントロールすることは困難ですが、併用することで症状を緩和させます。プロバンサインは神経系に作用する薬(保険適応)で、アセチルコリンという物質の動きを抑制して、発汗を抑制します。即効性が特長で、服用後1時間ほどで効果が現れ、約5時間効果が継続します。また、内服薬ですから全身に効果が出て、一度の服用で全身の汗を抑えることが可能です。
その他、副交感神経を遮断する作用のある内服薬や漢方薬など内服します。
手の平の多汗症に対して、他の治療法で効果がない場合に適応となります。合併症として胸、背中、お尻などの多汗(代償性発汗)などがあります。
※当院では行なっておりません。